5年間のひきこもりを含む8年間の無業生活から夢が持てる会社へ入社。ディースタンダード株式会社 海崎拓也さん(31歳) 後半

高校卒業後、父の転勤に伴ってドイツへ。ドイツの大学を受験しようとしていた海崎さんでしたが、
システムの違いから受験できず、失意のまま帰国。帰国後、母の闘病生活を支え、母の死を看取った海崎さんは、
自宅にひきこもりながらも家族を支えるために家事を行い続けました。
30 歳を前にうつ状態になったしまった海崎さんを心配した兄からのすすめでコネクションズかわさき(かわさきサポステ)へ。
その後、海崎さんはディースタンダード株式会社でインターンを行い、2015 年10 月、同社へ入社しました。
入社して間もなく5 カ月になる海崎さんに、自宅でひきこもっていたときのこと、「働く」ことへの思いを聞きました。

サポステ、支援団体のプログラム、
インターンを経て入社。あっという間だった。

どんなサクセスストーリーを読んでも「自分とはちがう」と思った。

うつ状態になっていたころ、インターネットで若者支援団体のことをチェックしていました。でも、「たまたまうまくいった成功例だけを載せている」と思ってしまうんです。だから、兄が心配して「コネクションズかわさきに行こう」と言ってくれたときも、僕は半信半疑でした。
コネクションズかわさきに通い始めたころは、1 週間に1 回ほど、臨床心理士の方のカウンセリングを受けました。この方がとてもいい方で、ずっとどん底だった僕の気持ちが少しずつ上向いていきました。
その後、コネクションズかわさきを運営するNPO 法人育て上げネットのプログラムを受け、若者UP プロジェクトにも参加することになりました。エクセル、ワードは就職するのに必須だと思っていましたから、受けるしかないと思いましたね。
引き続きMOS(Microsoft Office Specialist)講座も受け、模擬試験で高得点を取ることができました。そのときに講師の方が「みなさんは就職活動とプログラムを行いながら、MOS で高得点を得た。そのことを見る人は必ず見てくれている」と言ってくれたんです。僕は「MOS なんか取ってもムダなんじゃないか」と思っていましたが、講師の方の言葉に心を揺さぶられました。人生で無駄なことなんか何もないし、真剣にやればきちんと評価が得られると、はじめてわかったんです。
マイクロソフト社のテレワーク週間と連動した、若者UP プログラムの別海町留学に参加させてもらったのも、僕の気持ちに勢いをつけました。マイクロソフト社の人々などさまざまな人に助けられるなかで、「失敗を恐れず、いろいろなことをやってみよう」と考えられるようになりました。

会社に入ってからどんどん「やりたいこと」が増えていった。

NPO 法人育て上げネットのプログラムの一環として、僕はディースタンダードでインターンをすることになりました。インターン期間にはITIL(IT 運用管理)という資格を取ることができましたし、半期ごとに行われる説明会にも参加させていただきました。ふだん滅多に会うことのない社員の方たちがズラリとそろった中に入れてもらって、経営方針の共有をさせていただいた。これが入社を決めるポイントでした。
社内の雰囲気もよくわかったし、インターン生が聞いてもいいのかなと思うほど率直な話もたくさん聞けた。「この会社で働きたい」と切実に思いました。
入社してからも、年齢のことを言われることはないし、自分がやりたいと思うことに対して否定的なことはいっさい言われない。何かを断念しながら仕事をする必要はないので、僕はここに来てから、「やりたいこと」がどんどん増えていきました。

現在はモバイルの電波調査の仕事をしている海崎さんだが、キッティングと言われるパソコン導入時に実施するセットアップ作業を行ったりもしていた。「うちの会社にはすごくいろいろな仕事があるので面白いでしょ? IT といってもただPC に向かっている仕事ばかりではないんです」と海崎さん。かつては、モバイルの電波状態を調べるため、ひたすら都内を車で走り回ったこともあるそうだ。

ディースタンダード株式会社は主にプロジェクトごとにチームで業務を行っているため、社員はクライアント先に直接出勤している。「月に1回は懇親会があるので、そこで他の社員の方たちがいろいろな経験をシェアしてくれる」と海崎さん。いろいろな資格を取って、自分らしい働き方を見つけていきたいと語ってくれた。

もう「あきらめること」をあきらめていい。
きっといろいろな人が助けてくれるはず。

何もやっていなかったつらい時代にはもう戻りたくない。

今、この記事を読んでいる人はきっと「成功した今があるからそんなことが言えるんだ」と思っているかもしれない。でも、それは違います。僕も同じように前に進めず苦しんだ時期があったし、若者UP プロジェクトとNPO 法人育て上げネットに出会わなければ、今でも自分の気持ちに気付かないふりをし続けていたでしょう。きっと「働く」ために必要なのは、「確固たる決意」でも「義務感」でもなく、「ちょっとやっ てみようかな」というくらいの軽い気持ちなんです。
僕は、かつての僕のように一歩を踏み出せなくなってしまっている人たちにこんなふうに言いたい。
「人生をあきらめることをもうあきらめてしまおう」
働くということは、思い描いていたほどつらくもないし、想像していたほど大変でもない。楽しいと思えることだってたくさんあります。
助けを求めれば、きっと多くの人が支援してくれるはずですから、「ちょっとやってみようかな」という気持ちを、形にしてあげて欲しいなと思います。

「僕のことを半分あきらめていた父も、僕が就職できて喜んでくれています」と海崎さん。「父は、僕のことを、毎日食事を作ってくれて便利だと思っていたんだと思います。お互いに依存し合っていたんでしょうね」とひきこもり当時を振り返る。

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